福岡高等裁判所 昭和26年(う)2979号 判決
記録を調査すると、原判決が被告人の自白と、押収にかかる腕時計各一個の存在のみを証拠として原判示第一の三、四の各強盜事実を認定していること、並びに右各腕時計は被告人が右強盜の奪取物件なる旨自供した以外にこれが該強盜の奪取物件であることを認むべき何等の証拠の存在しないことはいずれも所論のとおりである。しかし強盜を自白した被告人が押収の証拠物を該強盜の奪取物件である旨自供した場合、該物件はもとより証拠物で自白そのものではないのであるから、自白にかかる事実の真実性が保障されるときは、該物件の存在は更に被告人の自供以外にこれが奪取物件であることを裏付けすべき証拠がなくても自白の補強証拠とすることができることはいうを俟たないところである。すると被告人の自白の外前掲、押収にかかる腕時計各一個の存在を証拠として原判示第一の三、四の強盗の各事実を認定した原判決は被告人の自白を唯一の証拠としたものでないから所論のような法令違反はなく論旨は理由はない。